葬儀の費用
葬儀の費用は、地域や葬儀の内容などによってさまざまです。
日本消費者協会が2003年に調査した葬儀にかかった費用の全国平均は、葬儀一式費用、飲食接待費、寺院への費用を合わせて236.6万円となっています。
これには、香典返しは含まれていませんので、これ以上の費用がかかっていると思われます。
内訳は、葬儀社に支払う葬儀一式費用が150.4万円、通夜からの飲食接待費が38.6万円、寺院への費用(戒名・読経・お布施など)が48.6万円となっています。
このようにお葬式にかかる費用は、葬儀社に支払う葬儀一式の費用だけではありません。
葬儀社の葬儀一式○○万円という広告の金額で、すべてまかなえる訳ではありませんので注意しなくてはなりません。
葬儀一式費用
葬儀一式費用のおもなものを項目別に見ると、次のようになります。
- [葬儀関係]
- 祭壇、棺、遺影写真、白木位牌、焼香用具、受付用品、看板、胸章、テント、幕、後飾り、供花
- [葬儀前の関係]
- 枕飾り、枕花、ドライアイス、遺体保管料、湯灌
- [斎場関係]
- 斎場使用料、音響設備
- [火葬場関係]
- 火葬料、控え室、飲食費、骨壷
- [車両関係]
- 寝台車、霊柩車、マイクロバス、ハイヤー
- [返礼品関係]
- 会葬御礼品、会葬礼状
- [人件費関係]
- 運営管理費、司会進行、案内係、役所や火葬の手続き代行
- [その他]
- 心付けなど
葬儀一式費用には、葬儀社が葬儀を行う際にかかる費用と、斎場使用料や火葬費、返礼品など葬儀社以外の業者に支払う費用があります。
葬儀社にかかる費用は葬儀費用といいます。他の業者にかかる費用は葬儀社が立て替えておいてくれるので立替の実費費用といい、あとで葬儀費用と一緒に精算します。
立替の実費費用は、斎場使用料や火葬料などの固定費と、返礼品や飲食接待のように人数によって変動する変動費に分けることができます。
祭壇 | 設置する祭壇にかかる費用 |
棺 | 故人を入れておく棺桶 |
会葬礼状 | 会葬者への礼状 |
遺影写真 | 遺影となる写真の費用 |
写真前花飾り | 遺影の前に飾る花飾り |
花額 | 遺影のまわりを生花で飾る装飾額 |
枕花 | 遺体の枕元に飾る花 |
枕飾り | 遺体のそばに置く、香炉・燭台・リンなどを置いた小机 |
後飾り | 遺骨、位牌、香炉、燭台、リンなどを置く小祭壇 |
寝台自動車 | 病院から自宅や会場まで遺体を運ぶストレッチャー付の自動車 |
ドライアイス | 遺体の腐敗防止のため |
御盛物 | 祭壇にお供えする果物や菓子など |
家紋入水引幕 | 式場内や祭壇などに使う家紋入りの水引幕 |
家紋入焼香幕 | 焼香用の台にかけておく家紋入りの幕 |
受付用品 | 受付で必要となる香典帳や会葬帳といった備品・文具類 |
胸章関係 | 遺族が胸につけておく白い喪章 |
高張提灯 | 式場の入り口に左右一対で飾る家紋や家名を入れた提灯 |
提灯下花飾 | 高張提灯の足元に飾っておく花飾り |
正面看板 | 式場入り口脇に掲げる故○○儀葬儀式場と入れる看板 |
看板下花飾 | 看板の足元に飾る花飾り |
案内看板・プラカード | 最寄り駅から式場までの道案内をするための看板・プラカード |
天幕・外廻り関係 | 会場外に受付などを作るときに用いられるテント等の屋外設備 |
お別れ花 | 出棺の時に、棺に入れるために用意される生花 |
手続き代行 | 役所への死亡届けの手続き、火葬の手続きなど |
斎場使用料 | 葬儀を執り行う会場を借りるための費用 |
火葬料 | 火葬場を利用するための費用 |
骨壺 | 遺骨を入れるための容器 |
火葬場控え室 | 火葬が終わるまで遺族や会葬者が待機しておく場所の使用費 |
火葬場飲食費 | 火葬が終わるまでに振る舞われる茶菓や飲み物などの飲食費 |
遺体保管料 | 遺体が自宅に戻れない場合に葬儀社などで預かるときにかかる費用 |
寝具 | 会場に寝泊まりするときに利用する寝具のレンタル料 |
貸衣装 | 喪服を用意できない場合に利用するレンタル料 |
霊柩車 | 遺体を火葬場まで運ぶための自動車 |
ハイヤー | 僧侶、喪主が火葬場へ移動するために用意する自動車 |
マイクロバス | 親族・会葬客が火葬場へ移動するために用意する自動車 |
配膳人 | 通夜振る舞いなどで料理を会葬者に給仕する女性スタッフ |
飲食接待費 | 通夜振る舞い、精進落とし、飲み物 |
会葬御礼品 | 会葬客に会葬礼状と併せて渡す返礼品 |
心付け | 霊柩車などの運転手、火葬場の火夫などに渡すチップ |
葬儀一式費用の注意点
葬儀社のパンフレットに記載されている「基本プラン」「セット料金」は、葬儀費用の総額ではありませんので注意が必要です。
基本料金に何が含まれているのか、含まれていない商品やサービスで必要な物は何かを確認し、それらの料金を把握しておくことが重要です。
飲食接待費
葬儀社のパンフレットに記載されている「基本プラン」「セット料金」は、葬儀費用の総額ではありませんので注意が必要です。
基本料金に何が含まれているのか、含まれていない商品やサービスで必要な物は何かを確認し、それらの料金を把握しておくことが重要です。
飲食接待費の注意点
飲食接待費は、お通夜の会葬者が予想以上に多く、見込み以上に費用がかかる場合があります。
会葬者の人数は費用に大きく影響しますので、人数予測は重要なポイントです。
最近は通夜振る舞いに盛り合わせ料理を頼むケースが多いですが、その内容もきちんと把握しておくことも大切です。
お通夜の食事代に費用をかけ、そこで故人の思い出話などをしてもらうことに重点をおく場合もあれば、お通夜は社会的な義理で会葬される人も多いので、ご馳走を振る舞うよりも、身内の方がゆっくり最後のお別れができるようにしたいと考える人もいます。
限られた費用で、どこに重点をおいて故人を送るかは遺族の考え次第です。
精進落しは基本的に、近親者のみへの手配となりますので、お膳やお弁当を人数分だけ用意します。
寺院への費用(宗教関係費用)
仏式の場合は、寺院へ納めるお布施(読経・戒名)が必要となります。
神式の場合は神社へ、キリスト教は教会へのお礼が必要となります。無宗教の場合は必要ありません。
宗教に関係のない葬儀を行う人が増えてきているとはいえ、日本人の約9割が仏式といわれていますから、慣習としては通夜・葬儀に戒名をつけて読経とともに見送るのが一般的です。
葬儀のときの僧侶へのお布施には、僧侶にお経を読んでもらうことに対するお礼の意味と、
戒名を授けてもらったことの二つの意味があります。
お布施の金額は、お寺の格式、住職の考え方、宗旨や地域によってさまざまです。
お寺との付き合いがあれば、いままでの付き合いや、これからの付き合いの程度によってお布施の金額を決めます。
菩提寺がない場合は、葬儀社に依頼して僧侶を手配してもらいますが、単に葬儀のときだけのお布施の金額は、葬儀社に相談すれば教えてもらえます。
寺院への費用の注意点
葬儀のとき、すでに寺院に埋葬するお墓がある場合には、のちのち問題がおきないように、檀家となっている菩提寺への連絡が必要です。
お寺が遠方にある場合も連絡して相談することが大事です。何も連絡をせずに葬儀を済ませると、埋葬するときになって菩提寺とトラブルになり、お布施の費用が二重にかかってしまうこともあります。
また、お布施のほかに、僧侶の交通費としてお車代を渡すことも慣習化しています。
お墓がなく埋葬については葬儀が終わったあと、ゆっくり考えるという場合には、戒名はつけずに、俗名のまま葬儀を行ってもかまいません。あとから戒名をつける場合もあれば、霊園墓地などでしたら、俗名のまま埋葬するケースもあります。
香典返し
お通夜、告別式の会葬者に当日すぐに渡す「即返し」と、忌明け後に送る「後返し」があります。
「即返し」では参列者に一律にお返しするので、お香典を多く包んでくださった方には「即返し」に加えて、「後返し」を行うことが多いです。
金額はいただいた香典の半分から3分の1くらいが一般的ですが、地域によっても親戚同士のお付き合いによっても変わってきます。
葬儀社の見積りを見るときの注意点
セット料金に何が含まれているのか、含まれていない商品やサービスで必要な物は何かを確認し、それらの料金を把握しておくことが重要です。
祭壇の内容は文字だけでは分かりませんので、必ず写真での確認が必要です。
品物だけで数量の表示がないときは、一個あたりの単価を確認しておきます。
会葬者の人数は、葬儀費用に大きく影響します。この人数を的確にアドバイスしてくれるかどうか判断する必要があります。
見積書以外に、一般の葬儀でかかると思われる費用には何があるのか、質問しておくことも重要です。
一般に、お布施や心付け、香典返しなどは、葬儀社の見積書には含まれていませんので注意しなくてはなりません。
葬儀費用の支払い時期
葬儀費用は、葬儀を終えた後、葬儀社から請求書が発行されます。
一般には、請求書到着から1週間以内に支払うようにします。
そのほかに、お布施や心付けなど現金が必要となりますので、一定金額を現金で用意しておくことが必要です。
葬儀費用を安くする方法
葬儀の内容が悪かろう安かろうでよければ、数社から見積もりを取って、一番安い業者を選択すればよいでしょう。しかし、それでは結局悔いが残ることになります。
残された家族としては、せめて世間並みにはしてあげたいというのが人情です。祭壇を選ぶときも遺体を前にして、一番安い料金の祭壇を指定することはなかなか難しいものです。
葬儀の費用は、会葬者の人数によって違ってきます。葬儀を知らせる範囲を絞り込むことである程度は調整できます。
また金額に大きく影響する祭壇と棺は、葬儀社の勧めるものよりワンランク下のものを選んでも、あまり見劣りしない場合もありますので、冷静に判断することが大切です。遺族だけでなく、冷静になれる親戚や友人と一緒に検討することも大事なことです。
また、葬儀社と相談する時にざっくばらんに予算がこれだけしかないから、この予算内でやって欲しいとお願いしてしまうのも一つの方法です。桁外れの値段でなければ断る葬儀社は少ないはずです。
諸事情から葬儀に予算をかけられない場合には、見栄を張らないことが大切です。葬儀社に素直に伝え、こころよく引き受けてくれる葬儀社を選ぶようにします。
葬儀のトラブル
葬儀に関して最も多いトラブルが葬儀費用についてです。
「質素な葬儀を希望したのに高額な料金を請求された」
「契約時の説明と違うサービス内容だった」
「事前に説明のない追加請求がきた」
「無断でサービスを追加された」
などなど、葬儀費用にまつわるトラブルは絶えません。
いろいろな葬儀社を比較することや、一番適した葬儀社を見つけることは、決して容易なことではありませんが、事前にトラブルを回避するためにも、まずはしっかりとした見積りを提出する葬儀社を選択することが重要です。