訪酒の記 No.2 お酒を飲む?呑む?
皆様こんにちは。訪酒の記、第二回です。
早速ですが、皆様は晩酌の習慣はありますか?
私は、前回の記事での「日本酒元年宣言」を皮切りに、晩酌を始めました。
晩酌初心者なので内心ドキドキです。
適量を見極めたり、器や温度による味の違いを気にしてみたり、
お酒に合わせる肴は何がいいか考えたり。
まだまだ試行錯誤の段階ですが、いろいろな発見があって楽しいです。
日々の晩酌についてはおいおい報告していきますので、お楽しみに!
さて、今回は「机上編」、この連載のキーワードとなる「のむ」の漢字についてです。
皆様は、「お酒をのむ」という時、「飲む」と「呑む」、どちらの漢字を使いますか?
どちらかというと「呑む」のほうがよく使われている気がしますが、いかがでしょうか。
実際、「飲」と「呑」にはどのような違いがあるのでしょうか。
ちょっと調べてみましょう。
「飲」は「お酒を飲む」という意味を持つことがわかりますね!
それに対して、「呑」はお酒に限らず物事を丸飲みするという意味を持つようですね。
そう言われてみると、「飲酒」という熟語はありますが、「呑酒」はありません。
両方の漢字の成り立ちについて、もう少し調べてみましょう。
ここまでくれば両者の違いは歴然ですね!
「飲」は「お酒を飲むこと」に由来する漢字、
「呑」は「のど」に由来する漢字なんですね。
さらに「㱃」以前には、酉+今で「酓」の字が存在したようです。
「今」を「含む」の意とする前出の説とは異なり、
この説では、「今」を「酒壺の蓋」の象形であるとしています。
もしかしたら酒壺の蓋でお酒を飲んだことが「飲」という字の起源なのかもしれませんね!
ちなみに、冒頭のイラストは酉+今+
そもそも、「飲」という漢字の成り立ちが「酒を飲む」に由来しているのは興味深いです。
「酒を飲む」ことから考案された「飲」の字が、やがてお酒以外にも
水やお茶などの飲料全般を「飲む」ことにも用いられてゆく過程で、
酒器に由来する「酓ヘン」から食器に由来する「食ヘン」に改められたのかもしれませんね。
でも、お酒好きの贔屓目でみるならば、お酒を飲む場合に用いる「飲」は特別に
「㱃」のままにしておいてもよかったんじゃないかと思ってしまいます。
だって、水、お茶、コーヒー、ジュース、牛乳などなど、
どんな飲み物を「飲む」ときにも「飲」が用いられるようでは、
「飲」の字があまりにも一般化してしまい、
お酒を「飲む」ことのスペシャル感が色褪せてしまうような気がしませんか。
この物足りなさを埋め合わせてくれる救世主が、「呑」という漢字なのかもしれません。
私たちが「お酒を飲む」ではなく、敢えて「お酒を呑む」と書くとき、
そこに「お酒を一気呑みする」という本来の意味を超えて
「お酒を味わい楽しむ」といったスペシャルな意味合いを
付与しているように思います。
たとえば、音楽を「聞く」よりも「聴く」、
絵画を「見る」よりも「観る」というように。
この連載でも、お酒を「呑む」と書く場合には、
「お酒をただ飲む」のでも「一気呑みする」のでもない、
プラスアルファな意味合いを込めたいと思います。
EMI (2017.3.1)
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