内閣府では、高齢化の傾向や高齢化対策の状況などをまとめた
『高齢社会白書』を平成8年から毎年発行しています。
その最新版である『平成28年版高齢社会白書』によると、
65歳以上の一人暮らし高齢者が増加傾向にあります。
平成26(2014)年の一人暮らし高齢者数は596万人で、
30年ほど前と比べると、その数は約5倍になっています。
一人暮らしでは、必然的に孤食、すなわち
独りぼっちで食事をする機会が増えることになります。
高齢者の孤食は、一人きりのために
食への楽しみが薄れ、栄養バランスも欠いたものになりがちです。
暑い季節になりますと、作る気力もなえますので、
そうめんばかり食べて過ごしている高齢者をときどき見かけます。
そうしますと、孤食の高齢者が陥りやすいのが栄養不足。
栄養不足が慢性的に続くと、
栄養不足⇒筋肉量の減少⇒活動量の低下⇒食欲の低下
⇒栄養不足⇒(以下、続く)
というような負のサイクルが待ち受けており、
どんどん体重が減って、やせ細っていくことになります。
米国在住の日系アメリカ人1,836人を対象にした研究によると、
高齢期の体重減少と認知症発症リスクの増加には
相関関係があることがわかりました。
つまり、高齢期においては、多少ふくよかなほうが
認知症の発症リスクを抑えることになります。
なお、中年期における肥満は
将来の認知症のリスク因子といわれていますので、
それ自体は認知症の危険因子ではありませんが、
体重減少におちいりやすいため、認知症発症を
誘引しやすい環境といえます。
とはいえ、一人暮らし高齢者の増加には
社会的な要因が絡んでいますので、今日明日に
名古屋大学での研究によると、一人で食事をとる場合でも、
目の前に鏡をおいて、鏡に映る自分の姿を見ながら食べると、
そうでもない場合と比べて、食事をおいしく感じ、食べる量も増えるとのこと。
確かに鏡を目の前においても、
鏡を用意するには、さほど手間もお金も必要としません。
実家に親が一人暮らししているというような方は、
食卓から見えるところに鏡を用意してあげるといいかもしれません。
ちょっとしたことですが、食事は毎日のことだけに
じわじわとした認知症予防の効果が期待できると思います。
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【文献】
T. F. Hughes, et al.
“Association between late-life body mass index and dementia”
Neurology vol.72 ; 1741-1746 (2009)