みなさま、こんにちは。
待ちに待った桜の季節もあっという間に過ぎ去ってしまい、5月の連休にむけてツツジが楽しみになってきた今日この頃、お元気でお過ごしでしょうか。
開花をいまかいまかと待ち望み、いざ開花してからも3分咲き、5分咲き、8分咲きと満開の時まで指折り数え、ついに見頃になったかと思った瞬間には早くも散り始めてしまう桜。
その美しさ、潔さから日本を象徴する花とされることに異論ありませんが、
その慌ただしく移ろい行き去る様は、新年度が始まったばかりのそわそわばたばたと
落ち着かない4月の気分も象徴しているように思います。
そんな慌ただしい4月も終盤になってくると、ようやくほっと一息。
お酒も心穏やかに呑めそうな気がしてきます。
さて、今回の訪酒の記では、「酒の肴」、お酒に合わせる料理について書いてみたいと思います。
お酒に合わせる料理と聞いて、まず思いつくのは「おつまみ」ではないでしょうか。
そんな「おつまみ」について、みなさまはどんなイメージをお持ちですか?
脂っこい、しょっぱい、味付けが濃くて、体に悪そう、太りそう?
実際のところはその逆のようです。
そして、もう一つ質問です。「汁」と「吸い物」の違いをご存知ですか?
汁は「味噌汁」、そして吸い物は「すまし汁」?
いえいえ。
「汁」は飯に添えるもの、「吸い物」は酒に添えるものという区別があります。
酒の肴、「おつまみ」について考える時、ご飯の「おかず」と対比させて考えるとスッキリします。
ご飯に合うもの、ご飯の進むもの代表格は、すでにセットになっている天丼、カツ丼、親子丼などの丼ものをはじめ、カレーや中華料理、焼肉など。どれもガツンとパンチの効いた味ですね。
汁でいえば、ご飯に合うお汁の代表格はお味噌汁。
豚汁やあら汁など少々大味でこってりしているくらいが相性ばっちり。
それに対してお吸い物は、ご飯に添えるものよりも軽く、薄めの味つけをします。
具には、生臭みや脂肪の少ない鶏肉や白身の魚などが使われ、
ユズなどの吸い口でアクセントをつけて風味を引き立たせます。
これは、お酒の味を引き立たせ、またお酒の味を損なわないような配慮がなされた結果です。
白飯がしっかり味の付いた副菜を必要とするのに対し、
酒は、酒の味を邪魔しない肴を必要とする。
ちょっと「おつまみ」のイメージが変わりましたか?
あくまでもお酒が主で肴は従。
このように確固とした主従関係の元に成り立つ酒と肴を幸福な関係に導くには、
酒と肴のマリアージュ論を勉強しないといけなさそうです。
お酒の邪魔をせず、そっと持ち上げてくれるような肴を合わせられるようになったら、
ますますお酒の楽しみも広がりそうですね。
参考文献
河野友美「汁と吸い物について」西山松之助ほか1994『たべもの日本史総覧』新人物往来社pp78-81.